絶対的な強さを持ちすぎたラグナの理想が、壊さない世界で。



狭い中でしか生きていない無知たる俺は夢を見るように、誰かが誰かを傷つけるのを嫌った。



誰もが痛まない世界を。


でもそんな世界はない。




だって、戦う知識は確かにここにあるんだから。



理想と夢。
現実とはならない、だからせめて混ぜ合わせていこうと努力する者たち。


俺は何も出来ないが、この前ラグナがしたあの大学院の連中を傷つけなかったのはラグナの努力だ。



俺は優しくはないとラグナは言った。でも、俺には優しく見えた。


「ラグナ……」


「君一人で賭けてこい。入り口近くで人だかりを見ただろう、そこだ。ついでしばらくは部屋(ここ)に戻ってくるな。戦う前に集中をしたい」



「あ、ああ」