当たり前と言えば当たり前なのだろうけれど、私はどうにも次の日学校に行く気がしなかった。勿論今までだって、似たような思いではあったけど。
「…いいや、サボろ」
学校に本気で行かないくらい嫌だと思わなかったのも事実。私は心の何処かで、あの輪に入れずとも女子男子の、あの授業中の喧騒や普段の馬鹿騒ぎを呆れながらもそんな世界の近くにいることを、嬉しく、思っていたのだろう。
置きっ放しのカバンだって取りに行かないといけないし、高校なのだから本当は欠課も取りたくなかった。だけどどんな誘惑にだって付いて回るのは早希という人間であって、結局のところ越えられも勝ても出来ない存在、なのだ。
「何それ…胸糞 悪、」
気が付けば私は途中で電車を降り、駅ビルの楽器屋へと足を踏み入れていたのだった。