「しつこい…」
「!ごめ、あの、…俺味方だからさ!絶対!」
そんなこと何処にも確証はないと判っている筈なのに私はすがりたいと思ってしまう馬鹿なのだろう。だけど、直哉が先程引いたのも事実。私は迷っていた。
「…でも、さ、…体…売るのは止めない?バイト一緒に探したりさ、だって何のメリットもな──」
私の視線で直哉が言葉を詰まらせる。別に睨んだ訳ではなかったけれど、恐る恐る話していた直哉にとって私は“怖い”存在なのだろう。
「ごめん…迂闊っていうか勝手だよなぁ…」
「…、もう売ったりなんかしてない…」
「え?」
聞こえていない。
届いていない。
直哉に届かない気持ちがある。彼には理解し得ない物語がある。私は、それのみで構成されているのだから。私は一体なにを、期待、したのだろうか。
「何でもない。じゃあね」
私には 幸せに足を浸ける資格などない。記憶と事実は消えないもので、私の影を身体を追いかけ回して蝕んで行く。原因は他でもない私で、責任も私にあるもの。
「やっぱ幸せなんか…要らなかった」
家に帰ったら相手を探してやろうと思った。捨てた筈の、行為を拾おうと思った。