「……というわけだ」


一通り話し終わって、悠たちを見上げる。


「やっぱり泣かせたんじゃない! 切り落としてやるわよ?」

「ゲッ……」


松沢の表情は、とてつもなく恐ろしいモノだった。


「柚莉、落ち着きなさい」


悠が今にも暴走しそうな松沢をたしなめる。

おおー……さすが俺の幼なじみ。


「仕方ないだろう? 陸だって、好きでこうなったわけじゃないんだから……」

「でもっ! ホワイトデー前日にドタキャンなんて最悪じゃないの!」


松沢が怒鳴るように叫んだ。


そうなんだよな。

今日は、13日。

ホワイトデーの前日だったりする。

会議は明日だからか、昨日の夜にメールでプロジェクトの資料が送られてきた。

目を通しておくようにということらしい。

だけど、さっきの杏の表情が頭から離れないから、仕事どころじゃない。


「杏樹かわいそう……」

「すまん……」


責められて当然なので、松沢に謝る。


本当にどうしようか。

放課後……杏に会いに行って、もう一度謝らなければ。


そう考えて、またデカいため息をついた。