そして、翌日。

というか、今日だ。

昼休みに、いつものように西棟でメシ食って、杏の膝枕……を、しようとしたが、話が終わるまではと思いやめた。


「杏」

「ん~?」

「14日のことだけど……」

「なぁに? 遊園地でしょ?」


ニコニコと笑うコイツに、本当に申し訳なく思えてくる。

約束したのに、それを俺は破ってしまう。

こんなことが頻繁に続いていたら、いつか、本当に愛想尽かされかねないよな。

普段から、どこにも連れ出さず、デートと言うデートもしないし。


『あのね。陸が隣にいるなら、どこでだっていいの!』


仕事の忙しさを理由に、こんなダメ彼氏の俺を責めることなく、笑って隣にいてくれる。

本当に、杏以外じゃ付き合える女はいねーよ。

そんな彼女を今から傷つけるのは、胸が痛い。


「昼から行くことにしてたよな?」

「うん。それがどうかしたの?」


「あー……えっとな、昼から会議が入った……」



ボソッと、聞こえるか聞こえないくらいの声で告げた。


ポリポリと頬を掻く。

目線を下にやりつつ、チラリと一瞬だけ杏を見た。


やっちまった……。

そう瞬間的に思った。

一瞬だったけど、コイツの表情を見るのには十分だった。

笑顔が消えて、悲しい目をしている。


「杏……マジごめん……」


そんな顔をさせたことが申し訳なくて―――……。

――グイッ……

俺の方に体を引き寄せた。


「……悪いな杏、今度この埋め合わせはするから……」


強く抱きしめたまま、そう呟いた。