今ここに赦される雰囲気はどこにも無い。
『ナツ、口開けろ。キスするぞ。』
吐息がかかる程間近で言われて、気まずさと怖さで涙が滲んで来る。
『泣いてもダメだ。逃がさねぇぞ。』
誠二の茶色くて柔らかい髪が頬に当たる。
何でキスなんてするの?
怒ってるなら殴ればいいじゃないか!いつもアタシがアンタにやってるみたいにさっ!
「……ってよ。」
フツフツとアタシの中から怒りが込み上げて来るのが分かる。
『何つった?聞こえねぇ。』
「殴ってよ!キスするぐらいなら殴りなさいよっ!」
怒りにまかせてそう叫ぶと、誠二に掴まれている両手が震えた。