LOVE☆LIFE 〜幼なじみレンアイ㊤〜



「そんな約束できるワケないでしょうが。」


そう言って自分の家のドアノブに手を掛けた時、一瞬で何かがアタシを包んだ。


え?え?何コレ?


誠二に抱きしめられてるんだと気づくまで数秒。


そして誠二がアタシの顎を持ち上げるまで数秒。


スローモーションのように誠二の綺麗な顔が落ちてくるまで更に数秒かかって、


アタシの意識は覚醒した。






ちょっと〜!!!


「やめっ……んっ…。」


誠二の胸を押し返す間もなく、抱きすくめられたまま唇が奪われる。


昨日の夜のような触れるだけのキスでは無く、お互いの粘膜を感じる深い深いキスだった。


ヤメテと叫ぼうとする度に、誠二の舌にアタシの舌が攫われる。


キスしてるココは部屋の前なのにっ、誰かに見られたら断然ヤバイのにっ…、誠二の熱に攫われて体の力が段々と抜けて行く。


気づけば誠二のシャツを握りしめ、崩れそうになる腰を誠二の腕に預けて居た。





『ナツ…腰が砕けてるぞ。』


エロスッ!!!


イヤ違うっ!コロスッ!!!



深いキスに耐えられなくて、涙が滲んで来る。



「誠二………コロス!」



上目使いに睨み付けるアタシを抱きしめながら、



『いいぜ、殺せよ。でも…ナツに殺される前に、オレがオマエを殺すかもな?』


『違う意味でな?』と相変わらずエロく笑った。



バカヤロウ!!!


あぁ、全く…どこまでも食えない男だ。



でも…誠二に触れられる度に跳ねるこの鼓動は何なんだろう。


キスもハグもイヤじゃない。誠二は家族のようなものなのに、安心しながらドキドキしている。


このスケコマシ野郎に全てを預けたくなる。


誠二の広い胸に包まれて守られたいと思ってしまうアタシはおかしいんだろうか…?


とりあえず、不意打ちでディープキスして来た誠二を一発ぶん殴って、来週から学校でアイツの死ぬ程好きな女とやらを見つけてやろうと心に誓ったのだった。






「おはようマキ。」


「おはようナツ。」


週明けの学校は朝からダルい。
本当にダルい。
でも友達に会えるのは嬉しい。


特に朝からキラキラ女子の親友マキに会えるのは心が洗われる。



「ナツその肩どうしたの?」


ギクーっ!
キラキラスマイルで早速鋭いツッコミを入れるマキ。そんなアンタが大好きだよっ!(涙)



「ちょっと肩こり?みたいな。」


「何ソレ。もうオバハンじゃん。」


可愛い顔して中身は全く乙女じゃないマキ。むしろ中身は乙メンだ。


ちくしょう!
誠二のせいでオバハン扱いされたじゃねーか!


誠二に噛みつかれて、チューチューベロベロ吸い付かれた跡は、なかなか消えなかった。


しばらくはオバハンとして肩に湿布して登校するしかない。






誠二はと言えば、相変わらずのフェロモン垂れ流しオーラで、優雅に登校している。


アイツが席に座れば、そこはまるでホストクラブのような雰囲気だ。


有害男めっ!
白いポストに投函されやがれ!


エロはエロを呼ぶらしく、誠二の周りには同じぐらいフェロモンムンムンの美女達が集まって来る。
まさに女版の誠二だ。


とてもじゃないけど高校生には見えねーぞ!ここは高級クラブか!?キャバクラか?


どれどれ?
もしやあのフェロモン美女の輪の中に、誠二の死ぬ程好きな女とやらが居るのかもしれん。


そっと誠二の教室を覗き見するアタシ。



トントン。



ビクッ!


イキナリ肩を叩かれて驚いて振り向くと、そこには誠二のフェロモン野郎仲間の雅也が立っていた。


「ナツ、何してんだ?」


うぉう、ビビッた!!!


「ちょっと無言で肩叩かないでよ!ビビるでしょうが!」






「オレの方がビビるわ!コソコソしてんじゃねぇよ。」


ケッ!
フェロモン男ってのはどいつもこいつもケツの穴が小せぇな!
いちいちビビんじゃねえよ!



「うるさい雅也。アタシは今偵察中だから邪魔すんな。」


「あ?何を偵察してんだよ。」



だからソレを言いたくないから偵察って言ってんだろうが!頭悪いねフェロモン君!!


制服のシャツを第二ボタンまで開けて、フェロモンムンムンな雅也が、ドアからコッソリ覗いているアタシの頭の上に、自分の頭を乗せるようにして一緒に教室の中を覗き見る。


だぁーーーっ!
オマエまで覗くな!
ここはアンタのクラスだろうがっ!


そして、密着しそうになっている頭の周辺から仄かに香水のいい香りが漂って来ている。


雅也…アンタただでさえフェロモン凄いのに、香水まで着けてるなんて、厚化粧したイケイケギャルみたいだね!





「で?誰を偵察してんだよ。」


ヒマな男だ、早くどっか行けよ。


とりあえず面倒なので無視してみる。


おっ、あの子美人だなぁ。肌が透けるように白くて、唇が仄かにピンク色!正に理想の乙女じゃん!!あの子かなぁ誠二の好きな子って。


「オイ…話聞いてんのか?」


あー何か外野がうるせぇな、気が散って観察できん!



「ナーツ!」



五月蠅いお邪魔虫なんてムシよムシ!ケケケ!と心の中で一人ギャグっていると、フッと首元に息を吹きかけられた。



ビクッ!



驚いて首元を押さえて雅也に振り返る。


「雅也…一体何しやがるワケ?」


え!何とか言えやコラ!
このドスケベブラザーズ!


「ナツがムシするからだろうが。」


うるせえこのお邪魔ムシ!
呼ぶ時にいちいちドスケベな振り向かせ方しかできないのかお前らは!






本当はぶっ飛ばしたい。
けれども…時間が勿体ないから今回は許してやろう。


ん?そうだ!
雅也なら誠二の好きな子を知っているだろうか?


コイツらは腐ってもフェロモンブラザーズ。きっと兄弟の契りを交わしちゃってるぐらい仲が良いハズ!


雅也に聞くのはウザいけど…、
本当の本当にウザいんだけど、時間短縮の為には仕方がない。



「あのさ、雅也に聞きたい事があんだけど。」


「おう、何だ何だ?恋の手ほどきか?ナツも遂にそういう気分になっちゃったか?何ならオレが直に、手取り足取り腰取り手ほどきしてやってもいいぞ!」


ウゼエーーー!

ウ・ゼ・エ!!!


思った通りの反応すんじゃねぇよ!このウザ男がっ!コレでコイツもモテモテなんだから、世の中の女子達の気が知れない。


「…ウザイからやっぱいいや。」


たまには鼻をヘシ折ってやらにゃあ。


「ナーツー。そう言う言い方はイケナイなぁ。本気でお仕置きしちゃうぞ〜。」


ウザーッス!


忘れてた…雅也はヘコたれない部類のフェロモン野郎だった。





「何でも答えてやるからコッチ来いよ。」


ポムポムと自分の胸を叩く雅也。


…ナゼ胸を叩く!?


「聞きたいんだろ?だったらオレの胸に飛び込んで来いや!」


いや…だから、ナゼそうなるっ!?


既に両手広げちゃってるし…。


鳩尾でもぶん殴ってやろうかしらと狙いを定めていると、


ドンッ!!!


ウガッ!


イキナリ誰かに背中を押され、…不覚にも雅也の腕の中へ!


「いらっしゃーい!」なんて言っちゃってるし!コノヤロウ!!


ギュウウウ〜ッ。


不覚にもデカイ雅也に思いっきし抱きしめられた。


んぐっ…ぐるじい…。


「70のCカップってトコか?ナツ以外と良い身体してんのな。」


ドゴッ!!!


「グエッ…っ…。」


さっき狙いを定めておいたおかげで、アタシの拳がコイツの息の根を止めるのにちょうど良い場所にクリーンヒットした。