ボブは笑みの浮かんだ口元にグラスを運んだ。


「あいつは最高の女だった。あいつ以上の女なんて世界中どこ探したっていやしねえ」


「そこまで愛せる女性にめぐり逢えたあなたが羨ましいです」


「まあ、あいつが死んでからも抱いた女は山ほどいるけどな」とボブは言うと、いたずらっぽく笑った。「だが相手の心まで抱いたことは一度もねえぞ。そんなことをしたのは後にも先にもあいつだけだ」



これがボブとの最初の出会いだった。

店主の話によればボブはこの店にもう十年以上も通っていて、とくに娘が嫁いでからは毎日のように来ているということだった。


きっといつもここで亡くなった夫人のことを想い出していたのだろう。