凛は大事には至らなかった。

次の日には個室にも戻れた。



俺はあの日から、久しぶりに彼女に会う。

そして、決意を決めてからも、始めて会うのだ。



コンコン。


俺は、緊張しながら、病室のドアを開けた。

病室の凛はまた少し痩せていた。

「大丈夫?」
俺は声をかけた。

「大・丈・夫。」

凛は口が開きにくくなっていて、ひどく話しにくそうだった。
もう彼女はあの綺麗な声で歌うことさえできないのだ。

あの日の俺たちが、なぜか夢のように感じた。

そして、凛の病状は明らかに進行していた。




「今は苦しくない?」

凛が首で頷いた。
必要以上、彼女はしゃべらない。


俺は涙をぐっと堪え、凛と話した。

そして、指にぐっと力を入れ、痛みが麻痺するまで
力を入れて握った。

そうでもしなかったら、俺はきっと、涙が流れていただろう・・・。



 俺は、彼女と一緒にいれる時間が短いことを感じ始めていた。

だが、苦しそうに咳を繰り返し、肩で呼吸する彼女の背中を
さすることしかできなかった。