公園であの声を聞いてから二週間が過ぎた頃だった。
マネージャーの坂井が家を訪れてきた。
いや、正確にはマネージャーだった坂井だ。
俺はつい最近までは世間じゃ名のしれた作曲家だった。
つい最近までは・・・。
実は、ここ一年まともに曲を書いていない。
普段、俺はピアノやギターなどの楽器を使うことなく、
何気ない日常の中で自然に、頭の中に流れるメロディを
楽譜におこして作曲していた。
だが、ある日を境に突然、頭の中にメロディが鳴らなくなったのだ。
それ以来、曲が作れず、一応事務所に籍はあるが、
ぎりぎりのところで首を繋いでもらってる状態だ。
作曲家が曲を書けなくなったら仕事にならない。
今までの実績やら、なんとかでおいてもらっているが、
俺はいわゆる落ちこぼれだった。
坂井はもともとは俺のマネージャーだったこともあり、
妙に面倒みがいい彼女は、担当が変わった今でも
よくうちに来ては俺の身の回りの世話をやいてくれる。