俺は曲が出来上がったら凛に頼みたいことがあった。
「実は凛にこの曲に歌詞をつけてほしいんだ。」
「えっ?私が?」
凛は驚いた顔でこっちを見た。
「うん。」
俺は当たり前のように返した。
「無理です!!歌詞なんて書いたことないし・・・。
第一、文才ないですし。」
彼女は全身で拒否した。
でも、俺は引き下がらなかった。
「俺のあの曲を聴いてどう思った?」
凛は少し間をおいて・・・。
「すごく、素敵な曲だと思いました。
純粋に。
もう一度聞きたい。そう思いました。」
と答えた。
「そっか・・・。歌いと思えた?」
「えっ?」
「率直に。どう思ったか?」
「歌ってみたい、と思いました。」
少し戸惑いながらも、彼女が答えた。
俺は得意そうな顔でこう返した。
「できるよ。
この曲を歌いたいと思ってくれたなら、君はこの曲を歌うイメージが
できているという事だ。
難しいことじゃない。
メロディに歌詞を乗せるだけでいいんだ。」
「でも・・・。」
「とにかく考えてみてくれないか?
君が今思っていることを素直に書いてくれればいいんだ。
歌詞に完璧なんてない。歌い手が届けたい思いを歌にすれば
聞き手に必ず伝わる。人の心に届くんだ。」
凛は少しうつむき考え答えを出した。
「・・・わかりました。やってみます。」
彼女は頼りなく返答し、了解してくれた。
俺は彼女がいつでも歌詞をイメージできるよう、
その曲をいれたMDとプレイヤーを渡した。