「そうよ。だから言ったじゃない。私の妹を頼むって。」

しらじらと返す。

坂井は続けた。

「私に似てかわいいでしょ。」

「似てないよ。」

俺は間髪をいれずに言い返した。

ちょっと気持ちがこもり過ぎたか・・・。


「何よ!!失礼ね。
 

 でも、羽琉のタイプど真ん中でしょ。」

電話の向こうで坂井がニヤニヤしてるのが手に取るようにわかる。

「は?
 な、何言ってるんだよ!」

「声どもってわよ・・・。」

「羽流、昔っから、ああいう女の子らしい、可愛い子がタイプなのよね。

 まだ、好み変わってなかったんだ。

 まあ、それは冗談にしても、20にしては大人っぽくていい女でしょ。
 
 とにかく、妹をよろしく頼むわね。」


またもや笑っているのが電話越しに伝わる。

「そうそう、言い忘れてた。

 かわいい妹なんだから手、出さないでね。」

坂井が念を押すかのように付け加えた。

俺は呆れたように返した。
「あのな~。
 そんな心配してるんだったら俺のとこによこすなよ。

 第一、いくら綺麗でも20なんかに手出す気になれないよ。」

俺は坂井を安心させるために言い切ってみせた。
第一、その気もなかった。

「そうですか・・・。

 それならいいけど・・・。
 まあ何にしても、あの子料理は上手いし、家事全般できるから。
 きっと役に立つわよ。」

「やっぱり全然似てないな。」

俺はまたもや間髪をいれずに返した。


「どういう意味よ!!

 とにかく、2週間よろしくね。」

「えっ?!いや、ちょっと待てよ。」

「お土産買ってくるから。じゃあね。」 

そこで坂井の電話は切れた。


まだ、引き受けたわけじゃないのに・・・。
大体誰が考えた所でハタチの子と2週間も暮らすなんて無理がある。