でも亜莉紗は――他人に
自分を理解してもらおう
なんて、これっぽっちもしない。


むしろ他人がなんて言おうと
自分の信念を押し通して、
もしそれで反感をかったと
しても、気になんてしない
だろう。


でもだからこそ、寂しい
気持ちも不安な気持ちも、
決して人にはさらけ出さない。


全部、ひとりで抱え込んで。

涙だって、最後の最後まで
我慢するんだろう。



彼女の流す涙は……強がりの
殻に覆われたもろい本心が
流す、純粋な痛みだ――。




『守ってやりたい』。



――あのとき、そう思っち
まったんだよな、オレ。



「……そーゆーの、『同志』
とは言わねーか……」



――マイッたな。

ソレイユ杯本選進出目指して、
マジ気合い入れようと
思ってたのに。



爽介はゆっくりと立ち上がると、
再び亜莉紗の眠るテーブルの
傍に戻った。


正面の自分の席ではなく、
亜莉紗の背後に立ったまま、
小さく寝息をたてている
彼女を見下ろす。


「……起きろよ、オイ」