仕事中はひとつにまとめて
いるロングの髪は、今日は
オフだからか珍しく両サイドで
ふたつに結んでいる。


その髪が頬や唇、白い首筋に、
ツヤツヤと輝く絹糸の
ようにかかって――…。


――だーっ、オレは変態かっ!

なんで一瞬見ただけでこんな
しっかり覚えてんだよっ!!


この場にいない方がいい
ような気がして、爽介は
自分のマグカップだけを
持ってソファに移動した。


腰をおろしてコーヒーを
グイッと一口飲み、心を
落ち着けようとする。


――ったく……あいつが
こんな所で寝るから……。



亜莉紗をこの部屋に誘った
のに、もちろんそんな変な
意味はない。


単純に、一番時間を気に
せず落ち着いて過ごせるし、
私物の蔵書なんかを資料と
して見せたかったし。


亜莉紗にとってもすでに
来たことがある場所だから
構わないだろうと思い、
呼びつけた。


――てかそもそも、そんな
下心あったら呼ばねーし……!


誰に責められてるワケでも
ないのに、必死に心の中で
弁解して。