部屋に入った最初の頃は、
久々にデザインに触れるのに
緊張しているのか、やたら
ソワソワして落ち着きが
なかった。


でもしばらくするとそんな
ことも忘れたように集中し、
『難しいわよ!』と文句を
言いながらも、その瞳は
イキイキしていてどこか
楽しそうだった。


――店でも、今はいい目
して働いてると思ってた
けど……やっぱそれとは
ぜんぜん違う。


心から好きなものに触れて、
喜びとやりがいで胸が
高鳴ってる――そんな、
キラキラした瞳だった。


そして、そんな瞳を見ると、
自分も『誘ってよかった』
と改めて思えた。


爽介自身も、2時間ぶっ通しで
講師役をつとめ当然疲れて
いたけれど、不思議とそれは
気にならず、むしろ楽しい
とすら感じられていた。


――やっぱいいな、
こーゆーのって。


そんなことを思いながら、
用意できた新しいマグカップを
手にリビングのテーブルに
戻ると。


「オイ――亜莉紗?」


なんだかやけに静かだと
思っていたら。