「うるせ。
オレがこんだけ丁寧に講義
してやってんだからいーだろが。

本は今日からしばらく
貸してやる」


文句をたれる亜莉紗に
負けじと強気な口調で返して、
爽介はキッチンに入った。

2人分のコーヒーのおかわりを
いれるためだ。


――おまえに覚えてほしい
ことは、山ほどあんだよ。


スイーツ作りで使われる、様々な素材の色や味。

それに、今回メインとなる
ピエスモンテ――チョコ
レートで造る工芸菓子。


これはある種芸術といっても
いいくらい高い技術力が
要されるもので、過去にも
数ある名作が発表されているし。

製法、特徴、それに材質が
チョコなだけあって、物理
的に困難な形状なんかも
あるから……

そういうのをひとつひとつ
説明していたら、どうしても
これくらい時間がかかって
しまうのだ。


――でも……。


コーヒー豆の準備をしながら、
爽介はふと思った。


――やっぱりコイツ、
デザインが大好きなんだな。