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――まさかまた、ここに
来ることになるとは……。


グレーの外壁の建物を見上げ
ながら、あたしは小さく
息をついた。



今日は水曜日で、お店の
定休日――つまりあたしはオフ。


そして、今見上げるその
建物は……爽介のマンション。



爽介とスイーツのデザインを
一緒にやることを決めてから
もう何日か経ってるけど、

今はあたしのシフトが遅番で
爽介と時間があわないんで、
まだ具体的なことは何も
始まってなかった。


どーするのかな? って
思ってたら、昨日の仕事中に
いきなり、『明日オレんちに
来い』って言われて――
そして、今に至る。


「何ため息ついてんだ?
さっさと行くぞ。

あ、それから、次からは
一人で来いよな」


今日は自分の指定した最寄
駅まで迎えに来てくれた
爽介が、事もなげにそう
言ってスタスタあたしを
追い抜いてく。


「えっ? そんな、まだ
道覚えてないわよ!」