「ま、よく言えた方じゃないか。
甘々のお前にしては」


「オイ 

ナンだよその言い方。
バカにしてんのか?」


「まさか。真剣に褒めてるんだ。

曖昧な優しさが、逆に相手を
傷つけることはよくある。

お前も、それに気づいた
から行動に移したんだろう?」


サラッと言ってのけるが、
言っていることはまさに
図星で、爽介は面食うしかない。


――相変わらず
あなどれねーヤツ


「そーだよ。仕方ねーだろ。

どんだけ待ってもらっても、
雫には気持ちがいかねーん
だから」


言いながら爽介がまた歩き
出すと、貢もその後ろを
ついて来た。


「そうだな。

まあ雫もしばらくはキツい
かもしれんが、あいつも大人だ。

そのうち立ち直るさ」


「――そうだな」


今は、それを信じて待つ
しかない。

自分にできるのはそれだけだ。


「それより――ソレイユ杯、
気合い入れていけよ」


背後の貢の声が少し熱を
帯びたのに気づき、爽介は
立ち止まって振り返る。