雫がギクッとしたように
肩を震わせる。

無言でも、明らかな肯定だった。


「オレさ、正直お前にそんな
ことしてほしくねーんだよ。

お前、ホントはもっとサバ
サバしてて、男のオレらと
でも対等に仕事できる、
気持ちいいヤツだったじゃん」


貢、雫、そして自分。

パティスリー・ルナにこの
3人が集まったのはほんの
偶然だけれど、自分は今でも、
それはラッキーな偶然
だったと思っている。


でも、自分のせいで雫は
変わってしまったから――。


「もうさ、オレのことは
忘れて、前の雫に戻ってくれ。

オレ、今でもお前と、
仕事はしていきたいと
思ってるから……」


「爽介………!」


雫の整った目から、大粒の
涙が溢れ出した。


それを見た瞬間、やっぱり
どうしてもチクリと心が痛む。


――けど……どーしようも
ねーよな……。


いたたまれなくて目を
伏せた爽介に、雫が震える
声で問いかけてきた。


「どうして?

ただ、好きでいるだけでも
ダメなの?

どうして、あたしじゃダメ
なの……?」