「でも、それでもあたしは
爽介のことが好きなのよ。

諦められないの……!」


「でも――ゴメン。
それしか、オレには言えない」


ハッ――と。 

雫が息を飲む音が、耳に届いた。


「お前のパティシエの腕は
認めてるし、仕事仲間と
してはすげーイイヤツ
だって思ってる。

でもオレは――この先も、
お前に恋愛感情は持てない」


「爽介―――!」


「ゴメンな。

ホントはもっと早くに、
ハッキリ言うべきだったんだ。

でも、あんまりお前を
傷つけたくなかったし、
厨房の雰囲気も悪くしたく
なかったから、逃げてた」


それに――もしかしたら
自分も心のどこかで、
『いつか気持ちが変わる
ときもあるのかも』なんて
思っていたのかもしれない。



でも……もうそれは、
ないとわかった。


「オレが亜莉紗にイロイロ
かまってんの見て、お前、
オレがあいつにホレてんの
かもって考えたんだろ。

それで、さっきみたいに
聞いてきたんだよな」