「環境で、人は右にも
左にも転ぶ。

もしパリでお前を取り巻く
環境がもうちょい違ったら、
結果も多少は変わってたかもな。

ま、今さらそんなこと
言ったってどーにも
なんねーんだけどさ」


「ハハ、そーね」


もうその2年間は
終わっちゃってるもの。

今さら、取り戻せなんかしない。


「でも亜莉紗。

今は、今なんだぜ」


急に名前を呼ばれて、あたしは
ドキッとして顔を上げた。


爽介と目があう。


爽介はもう一度、その意味を
確実に伝えようとするかの
ように、ひとことひとこと
ゆっくりと言った。


「過去がどうだったって。

今は、今の気持ちに正直に
生きりゃいーんだ。

――お前、デザイン諦めた
とかウソだろ?
今でも好きだし、
やりてーんだろ?

だったら、その気持ちに
正直になれよ」


「爽介………」


その瞳から目がそらせない。


もう、降参だよ。


そんな瞳に見つめられたら――
これ以上、強がりなんて
通せそうにない。