少し迷ったけど、言われた
とおり座るあたし。


黙って待ってると爽介が
マグカップを2つ持って
やって来て、1つをあたしに
手渡した。


そのままカウンターの所
まで戻って、近くにある
背の高い椅子に座る。


「……苦い」


爽介のいれてくれた
コーヒーはブラック。

でもあたし、基本ブラック
ではほとんど飲まない。


「だーっ いちいち
メンドイヤツだな。 

いれてもらっといて文句言うな」


ナニよ、それ。


コーヒーくらい、自分の
好みで飲んだっていいじゃない。

相変わらず、横暴なヤツ。


横暴で、イジワルで。



なのになんで、あたしは
今ここにいるんだろ?


コーヒーの苦さが体を
満たしていくと同時に、
不思議と心が冷静さを取り
戻してきてるような気がした。


あたしはマグカップを両手で
包むように持ったまま、
チラリと爽介を覗き見る。


――相変わらず怒ってる
みたいな、ムスッとした
表情でコーヒーを飲んでた。


「――ナンだよ?」