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車内に、会話は全くなかった。


爽介は頬杖をついて、
ジッと窓の外を見つめてる。


その表情は、考え込んでるのか
怒ってるのか……イマイチ
つかめないけど、いつに
なく硬くて、なんだか
話しかけづらかった。


そう。


聞きたいことは山ほどある。


でも、爽介はそんなだし、
あまりにもワケわかんない
ことばっかりで、何から
聞けばいいのかもわかんなくて。


結局、あたしも押し黙った
まんまだった。




……15分ほど走った頃。


爽介がドライバーにちょっと
道の指示を出して、その
通りに進んだタクシーが、
静かに停車した。


「降りるぞ」


爽介に言われて、今さら
ながらハッとするけど――。


「―――ここ、どこ?」


どこに向かってるのか
なんて、すっかり気に
するの忘れちゃってた。


爽介はドライバーに料金を
支払いながら、簡潔に
教えてくれる。


「オレんち」