「なんでっ、爽――!」


爽介、とその名を呼ぼうとして。


でもあたしは、爽介の次の
行動にさらに驚いて、声を
飲み込んだ。


「ワリィ、蓮。
コイツ今日早退な」


ショーケースの向こう側に
いるマッキーにそう言って――

爽介はクルリと振り返ると、
あたしの右腕をつかんだんだ。


「行くぞ」


「えっ、ちょっと………!?」


強引に、腕が引かれる。


爽介は有無を言わせない
力であたしを引っ張って、
自分が出てきた店のバック
ヤードに続くドアに
入ろうとしてた。


引きずられてくあたしの
視界に、その場にいた全員が
あっけにとられてポカンと
しているのがチラリと映る。


あたしだって、同じ気分。


でもあたしがそれを見て
いられたのはほんの一瞬で、
爽介によってあっという間に
裏へ連れて来られた。


「帰るぞ」


裏に入るやいなや、爽介は
短くそう言って――そのまま、
裏口から店を出ようと
続けて歩き出す。


「えっ、ウソッ。

あたしまだ制服っ……!?」


「んなもん悠長に着替えてる
場合じゃねーだろ」