――ダメだ。


そろそろ、ガマンの限界。


「……いい加減にしてください」


あたしはその場に立った
まま、低い、絞り出す
ような声で言った。


パッと見は遠巻きに見守ってた
感じのあたしがそんな場所
から口を挟んでくるなんて、
きっと誰も思ってなかったに
違いない。


隣に立つ咲希も、もう1人の
スタッフも――そして苦情を
受けてた2人とオバサン当人も。

全員が、驚いて弾かれた
ようにあたしを見た。


「黙って聞いてれば
言いたい放題ですけど。

うちの店のケーキに髪の毛が
入ってただなんて証拠が、
どこにあるんですか?」


「ちょっ、亜莉紗!?
何言って――!」


咲希があわてふためいて
あたしの制服の袖を引っ張った。


でも、あたしはその手を
すぐに振り払う。



――もうあたし、限界
超えちゃってんのよ。


言い出したら、そう
簡単には止まんない。


「だいたい、そのケーキ
どうしたんですか?

食べたの? 捨てたの?

そこまで文句言いたいん
なら、フツーそれ持って
来ません?」