デコレーションの最終
チェックは、考案者の
爽介がしてたはず。

爽介が、もし本当に髪の毛が
入ってたにしたって、
見逃すはずがない。


ううん――そもそも
パティシエがそんな初歩的な
ミスするわけないし、あたし達
だってボックスを閉じる
前にしっかりチェックする。


これだけ丁寧に仕事してる
店でそんなこと、ありえないよ。


間違いなく、あのオバサンの
根も葉もない大ウソだ――。


「だいたい、こちらって
ちょっとパティシエの
お仕事が雑なんじゃないの?

前にも、同じようなことが
あったのよ」


ムカッ。


自分の頬が熱くなるのがわかる。


よく言うわよ。

その『前』っていうのだって、
事実かどうかわかったもん
じゃない。


あたしが知る限り、他に
そんなクレームを言われ
たことなんて、一度も
ないんだから。


「店構えは立派でも、
パティシエもスタッフも
お粗末ね。

スイーツの見た目の華やかさ
だけでお客を釣ろうったって、
そう上手くはいかないのよ?」