「あの、恐れ入りますが、
お求め頂いた商品というのは
どちらになるんで……?」


オバサンを応対してる2人も、
もちろんそのことは
わかってるはず。

真偽を確かめようと思った
のか、片方がそう切り出した。


「どれって、全部は覚えて
ないけど……髪の毛が
入ってたのは、そうね、
たしかこれよ」


オバサンが指差したのは――
ショーケースの中でまばゆい
光をはなつ、ピンクの
コフレ・ア・ビジュー。


「そんな、ありえない」


あたしは思わずつぶやいてた。


咲希がぎょっとして
あたしを見る。


でも、幸いオバサンの
耳には届かなかったよう。


オバサンはあたしに目を
向けることもなく、また
2人に向かってくどくどと
文句を言い出してた。


……よりにもよって、コフレ・
ア・ビジューに髪の毛が
入ってただなんて。


そんなこと、絶対にある
わけない。


だってあの商品は、今
パティシエの3人が最も
力を入れて作ってるものなのに。