「でも、さっき屋上で泣いてたじゃん」

「ちげーよ! それはっ」

「それは?」

だんだんいつもの調子が戻ってきた大和に、詰め寄る。

「だー、もうっ。美咲になかなか好きって言えない自分が情けなくてだよ」

大和は頭を掻きむしると、そっぽを向いてしまった。

「ありがとう。大和」

そう言って、大和の背中に触れた。

「そこ、礼を言うとこかよ」

大和が拗ねた声を出す。

「あたしのこと、好きって言ってくれて」

「本当に俺でいいの?」

「うん」

「悟のこと見てたらさ、俺って本当に情けないって思った」

大和がぽつりと言った。

「それで元気なかったの?」

「俺に美咲と付き合う資格あんのかなって」

「あるよ」

声に力を込めた。

「あるよ。だってあたしが好きなのは、大和だもん」

「本当に?」

「うん」

あたしが大きく頷くと、大和は振り返って、あたしの肩をがっしり掴んだ。

「俺、絶対美咲を泣かせない」

「それ今日で3回目」

あたしが笑うと、大和も笑った。

梅雨時とは思えない程の鮮やかな夕日が、あたしたちを照らしていた。

夏の始まりが、もうそこまで来ている。


―END―