「よお!バカップル」

校門の所で声がして、立ち止まる。

「悟」

振り返ると、そこには悟が立っていた。

「大和、さっきは悪かったな」

そう言って、悟が投げた袋を大和がキャッチする。

「ははっ、サンキュ」

大和が袋から取り出したのは、冷えピタ。

やっぱり、悟が大和のこと……。

「美咲っ」

悟が、今度はあたしの名前を呼んだ。

「こいつに泣かされるようなことがあったら、いつでも俺のとこに戻って来いよー」

冗談っぽく笑う悟を見て、あたしは胸が締め付けられる。

「悟……」

「謝るなよな。俺が惨めになる」

そう言われて、ごめんと出かかった言葉を飲み込む。

「うん……。ありがとう、悟」

「おう、じゃあ、お二人共、お幸せに」

そう言うと、悟はひらひらと右手を振って帰って行った。

あんな別れ方をしたのに、それでもあたしの事で一生懸命になってくれた悟。

ありがとう。

あたしは悟の背中に、もう一度心の中でお礼を言った。