「お前さ、美咲に対しても、そんなに適当なわけ?」

悟の声色が変わった気がした。

「だったら何? お前には関係ないだろ」

「美咲とも、ただの遊びなのかよ」

悟が詰め寄ってくる。

「お前、さっきから失礼じゃね? まるで俺が、女と遊んでばっかのすげー適当な奴みたいじゃん」

わざとはぐらかすように、悟から目をそらし、軽い口調で言った。

「実際そういう奴じゃねーかよっ」

怒鳴り声と共に、胸ぐらを掴まれた。

「そうだよ。俺はそういう奴だよっ」

俺も負けずと悟を睨み付けた時だった。

「――っ!!」

左の頬に衝撃が走り、俺はそのまま背後の壁にぶつかり、尻餅をついた。

「てめーっ、何すん……」

殴り返そうと立ち上がった俺の動きが、止まる。

「悔しいよ。何で大和なんだよ……」

悟が泣いているように見えた。

いや、実際は泣いてはいないだろうけど、
その声と、俺を殴った拳が震えていた。

こいつ、本当に美咲が好きなんだ。