美咲が学校を休んでいて、正直ホッとした。

あんなことをしてしまった後で、どんな顔をして会ったらいいのか分からない。

美咲に何て声を掛ければいいんだろう。

そんな事を考えながら、今日の俺も、携帯を開いては閉じるを繰り返す。

授業も友達との会話も、全部が上の空で、

「大和、話がある」

昼休みに、悟に肩を掴まれてやっと、俺の意識は美咲の事以外に向けられた。

「何だよ」

俺は体を揺すって、悟の手を振り払うと、不機嫌そうな声を出した。

悟は、美咲がこの前別れたばかりの元カレだ。

悪い奴ではないが、美咲と付き合ってたということが、俺に悟への敵対心を抱かせていた。

「いいから来いよ」

悟の口調に、良い話のはずがないと思いながらも、俺は重い腰を上げる。

悟は、屋上へと続く非常階段を上り、最後の踊り場で足を止めた。

「美咲、返してくんない?」

しばしの沈黙のあとで、悟が口を開いた。

「お前から美咲を取った覚えはないけど?」

「だけど美咲は、俺よりお前を選んだんだぜ」

「それは美咲が決めたことだろ。俺には関係ないし」

美咲の元カレである悟に、本音なんて言えるはずもなく、俺は出来るだけ冷静を装って言った。