「佳奈……ごめん」

「もう、謝んないでよー。わたし、何か惨めじゃん。別に気にしてないよ。大和とは、ただの友達だし、謝る必要ないじゃん。じゃあ、授業始まるから。切るよ」

必死で取り繕っているような、明るい声で、佳奈は電話を切った。

ツーツーと響く電子音に、俺はもう一度、「ごめん」と呟くと、携帯を閉じた。

これで、いいんだよな。

自分自身に問いかけてみる。

だけど、答えなんて出てくるはずもなくて、
何が正しくて、何が間違っているのか、
分からない俺は、そこから先へと進めないでいた。

美咲の名前を携帯の画面を映しては、数秒見つめただけで閉じるのを、何度繰り返しただろう。

結局俺は、美咲に電話をかけることなく、朝を迎えた。

重い足取りで向かった学校。

だけどそこに、美咲の姿はなかった。