「そんなこと言わないで、沙耶ちゃん。これから家族になるんだから」

「――――は?」

「……沙智子さんから手紙を貰っていたんだよ。もしもの時は、沙耶ちゃんを引き取ってほしいと」


……初耳なのだが。

眉をひそめた私に、嘘だと思われたと思ったのか、伯母の方がバックから白い封筒を取り出した。

表には『茅野吉乃様』と書かれている。


――確かに彼女の字だった。

私は、渡された封筒の中身を取り出し、便せんに書かれた彼女らしいきれいな文字を読み始める。

そこには、確かに、彼女の先が長くないこと、そして私を養女として引き取ってほしい旨が書かれていた。


……ちょっと待て、彼女と今後のことを話し合った時に、私は孤児院でかまわないと伝えたはずなんだが。

むしろ、親戚の方が面倒で私は嫌なのだが……。


「君は孤児院――親のいない子供を預かってくれるところでかまわないと言ったそうだが、
 沙智子さんは何かと差別の対象になるから、できればちゃんと親がいる方がいいと考えていたようだよ。」

そう言って、伯父は手紙を指し示し、先を読むよう促した。

手紙には2枚目があって、確かにそう書かれていた。