いつしか涙が頬を伝っていた。
どうやら私は、彼の話と自分の今までを重ねてしまっていたらしい。
「ご…ごめん。気にしないで、続けて…」
「でも…」
「お願い、レイ。聞きたいの」
「………わかった。
その事は、王子の母親、つまりこの国の女王様も知っていたんだ。
女王は王子が亡くなる前からも、幾度となく王子と子供を連れ戻そうと試み説得し続けたけれど、人間界へ行ける日は限られているんだ。満月の雨の夜しかね」
「……満月の、雨の夜、」
"満月の雨の夜は決して外に出てはいけないよ"
優しくて温かいお父さんの声を思い出す。
「そしてまたその日がやってきた。しかもそれは偶然にもその子の誕生日で、」
まさか……
「…レイ、」
「女王は騎士にその子を迎えに行くよう命じた。
騎士は、人間界へ、その子の元へ降り立ち、連れて来る事に成功した」
「レイ……っ待って」
嫌な予感がする。
お願い。言わないで…
「その子は、王子譲りの漆黒の綺麗な髪を揺らして、」
彼はゆっくりと私に近付き言葉に合わせるように髪にキスを落とした。
「王子譲りの赤みがかった黒の瞳をその騎士に向けた」
視線が、絡まる。
話が、…繋がった。
「君がその子供だよ。
ルナ。」