「この国の王子は人間界にとても興味を持っていてね、知り合いの魔女に頼んで人間の姿にしてもらい人間界へ行ったんだ。そこで王子はある女性と出会った。二人は、」

「…恋に落ちた、とか?」

「そう。そして女性は王子の子供を身籠ってしまったんだ…。女性は王子の正体を知らなかった。王子も言うつもりはなかった。…王子は完全に人間になるつもりでいたからね、」

「…それで?彼女は産んだの?」

「彼女は、子供を産んだよ。
…自らの命を犠牲に、ね。」

「そんな……」

「子供は女の子だった。
王子にとてもよく似た、美しい女の子。
王子は、再び魔女に頼んだ。
"自分とこの子を完全に人間にしてくれ"と。」

「…」

「魔女は言った。
"自分の出す条件を飲むなら、
してやろう"と」

「条件、て…?」

「"その子供が18になったら、自分の息子と結婚させる事"」

「そんなの…」

「王子は即答した。
"そんな条件は飲めない。もう貴女には頼らない。自分がきちんと人間として育ててやる"と」

「…」

「王子は、その言葉通り、立派に育ててみせた。でも魔女は諦めていなかったんだ。その子が、12の時、魔女は王子を殺害した。王子はもう抵抗も出来ないくらいに力が弱まっていてね、でも最後の力で、子供だけは何とか逃がしたんだ」

「その子は…」

「可哀想にね。人間達の欲の捌け口にされて、傷付き、汚され…。ルナ…?」