「バンパイア、ですって…?」

この人やっぱり頭がおかしいのかしら。
バンパイアなんてお伽噺の中での生き物でしょ?

「コレでも信じてくれないの…?」

少し悲しそうに呟きながら、
彼はまだ私の血がついている指を見つめた。

「そんなの、素直に認められる方がおかしいわよ」

「…じゃあ次にこの国の話をしようか。」

そう言い、彼は私の体をゆっくりと起こしてくれた。
自分はベッド際のソファーに腰かけて少し距離をとった。

「この国の名は、ルアシェイア王国。通称、月の国。」

「月の国…」

「昔は雨なんか降ってなかったんだ。それに月もいろんな姿を見せていた」

「…」

「ある日を境に、この国はずっとこの調子だ」

「何が、あったの…?」

一呼吸おいて、彼は伏せていた目線を私にぶつけた。紅い瞳には哀しみと希望が潜んでいるかに思えた。