そんなことを言って、恨めしそうな顔であたしを見る彼。



「あたしね、考えてみたらあんまり赤谷君のこと知らないんだよね。
そしたら何か、気持ちだけ焦っちゃって…
ごめんなさい」


素直にそう謝ると、彼はいつもみたいに笑って
あたしの頭をそっと撫でる


「謝んないでよ。
てかむしろ嬉しいよ、俺。」


「…嬉しい?」


「うん。だって俺ばっかだと思ってたから。
先生のこと好きなのも。
こんな風に余裕がないのも。

けど先生も同じ気持ちだって分かって、ちょっと安心した」




どうしてだろう。
別にきっかけも
これと言って思い当たる理由も
何もないのに。

もうこんなに彼があたしの大部分を占めている



「知らないのはお互い様じゃん。
だからこれからちょっとずつ知っていこ」


「…うん」