以前のあたしなら、こんな状況…
恥ずかしさでパニックになっていたことだろう。

だけどこの時は違った
あたしの中にある何かが、あたし自身を十分すぎるくらいに焦らせていたから。


よく考えれば
あたしは彼のことを何も知らなかった

彼の好きなことも
嫌いなことも

そしてそれは彼も同じ。



頭の後ろに手が回された

さっきのとは比べものにならないくらい

深く
もっと深くを求めていく



口の隙間から声が漏れた

あまりの異質な空間に
あたしは何もかもを彼に委ねていく



「せんせー…」


気が付くと目の前には少し気まずそうな顔をした彼がいた


「…ん?」


まだ夢の中のような気分のあたしは
うつろな目で彼を見る


「ごめん、がっつきすぎた。
でも…今のは先生がいけないんだからね。」