「逃げられると思うなよ?」


やはり、先程殴ったばかりの変態が、ソファに座っていた。

母は固まり、父は震えていた。
床に正座で。


「……何の用だよ…」

「匡!!」

母が慌てたように、怯えたように叫ぶ。

「そっか。匡さんかぁ!」
拍子抜けするくらい、明るい声。

「何の用ですか?」

今度は、丁寧にいう。
母さんの心臓がもたないからな…。

「僕の名前は、カイン・ラスベルト。匡さん、一緒にきてくれる?」

どこへ。
なんて、聞ける雰囲気じゃなく…。

言われるまま、カインと名乗る外人に肩を拘束されて、車に乗せられた。


父母は、涙を流しながらハンカチを振っていた…。



―助けろよ!―


というツッコミはしないでおこう、と思う。