「っつーか!おめーどーしたんだよその顔!」
近くに行って気付いたのか、広樹さんは陸さんの顔を見て大笑いした。
怪我した当初よりはだいぶ腫れも痣も消えてきたが、まだ完全ではない。
「うるせーな、ちょっと色々あったんだよ」
「陸がここまでやられんのってめずらしくね?体なまってたのか?」
「別に・・・なまってねーよ」
あたしは2人の目の前に冷たいお茶を出した。
「陸さん、もう喧嘩しないって約束守ってくれたんだよね?」
「なっ・・・おめぇー・・・余計な事ゆーな!」
珍しく恥ずかしそうな顔をする陸さんが可愛く見える。
「は?・・・喧嘩しないって・・・陸が?」
信じられないといった表情の広樹さんに、陸さんは「うぜぇ・・・」と小さくつぶやいた。
「乱華は引退するわ喧嘩はやんないわ・・・おめーも変わったなぁ・・・」
穏やかに笑う広樹さんの顔はどことなく安心したようにも見える。
「奈緒ちゃんの事、大事にしてんだな・・・百合も喜んでると思うぞ」
百合さんの名前に陸さんが反応し、静かに口を開いた。
「俺・・・今まであいつの事人前で話したくなかった。思い出したくもなかったし。…俺はずっと逃げてたんだな」