この前の事・・・なかった事にしていいのかな。


でも冗談だったようにも見えないし・・・


しばらく沈黙のままだったが、その静寂を破ったのは広樹さんだった。




「陸とは・・・あれからうまくいってんの?」




そう言えばあの日、お礼も言えずに帰っちゃったんだっけ・・・



「あ・・・はい」



「そっか、良かったな」



「あの・・・この前はありがとうございました!陸さんの昔の事、色々教えてくれたのにあの日お礼も言わずに帰っちゃって・・・」




その言葉に広樹さんが立ち止まり、振り返ってあたしを見た。



「え?そんなの気にしてねーし。ってか俺も・・・困らせるようなこと言ってごめん。」



伏し目がちにそう言った。


やっぱり冗談なんかじゃなかったんだよね…


ちゃんと広樹さんに言わなきゃ・・・




「いえ・・・こんなあたしの事思ってくれて本当に嬉しいです。・・・でもやっぱりあたしには陸さんしか見えないんです・・・だから広樹さんの気持ちには応えられなくてごめんなさい!」



俯くあたしに広樹さんは「顔を上げて」と言う。



「奈緒ちゃん、強くなったな。それって陸のおかげ?なんかむかつくなー陸のやつ。うまくいってるって見せつけられてるみたいで」




笑ってそう言う広樹さんはどこか寂しそうで・・・