「う・・・ひっく・・・ばかぁ・・・だからって…」



涙が止まらない。


喧嘩はしてほしくないけど、もしあのままだったら・・・って思うと恐い。



「馬鹿ってなんだよ・・・約束守ったのによぉ・・・」



辛そうにしながらも半笑いであたしの頬の涙をすくう。



「陸!大丈夫かよ!!」


「奈緒!!」



栞と亮輔さんが駆け寄ってきた。



「ああ・・・わりぃな・・・」



ゆっくりと体を起こそうとする陸さんを、亮輔さんが支えた。



「ファミレスの店員、さっきサツ呼んでたみてーだから行くぞ!立てるか!?」


「・・・ああ」



亮輔さんは単車の後部座席に陸さんを座らせ、自分のお腹に陸さんの手を回し、落ちない様に手首を紐で結んだ。


あたしと栞も急いで先輩の車に乗り込んだ。


心配で車内から一緒に並んで走ってる陸さんの様子を見ていると、栞がつぶやいた。



「陸さん、かっこいいね・・・約束、守ったんでしょ?」



「うん・・・でもあんな場面を見たかったわけじゃなかったのに」


「ケジメ付けたかったんじゃないの?長い間この世界にいる人が抜け出すってそう簡単なもんじゃないもの・・・特に陸さんはあんな風に敵も多いわけだしさ・・・」



確かに・・・殴られる前、あたしに向けられた陸さん表情が、大丈夫。これで最後にするって言ってるみたいだった。