ピピッ


「はい、検温終了。
…よし、以上なしね」


体温計に表示されたいたって普通の平熱。


熱がないのを確認すると、満足そうに体温計を私に見せる。


「ねぇ、最近は調子がいいから外出許可くらい出ないの?」




「芙由ちゃんの場合じゃ難しいわよ。

一度、外で倒れてしまったんだから」




半年前に一度だけ外出許可をもらい、友達と遊びに行った。


久々に外に出れたことが嬉しすぎて、私は忘れていた。



自分の心臓が悪いことを。




「…私、死ぬのかな」



走ることの楽しさも知らずに、


制限された甘いものをおなかいっぱい食べることも出来ないで、


病室の窓から見れない景色も見れないで。






それに私、まだ恋もしてないのに。






青春時代を、病院のベットの上で過ごす、単調な毎日。


唯一の楽しみと言えば、お見舞いに来てくれる友達とのお喋りくらい。




「芙由ちゃんに覚悟があるなら、いつでも手術の用意は出来るのよ」


「30%の確率じゃ、神田さんに命預けらんないよ」


嶋さんの嫌みをニコリと笑顔でかわした。


呆れたようにため息をつくと、そのまま別の患者さんを見に行ってしまった。