引き込まれるように、彼がギターを引き終えたあとも、余韻でなにも考えられなかった。
ただ、瑠衣の声とギター音だけが、頭に残って響いている。
「っで、感想は?」
ギターをしまい終えた瑠衣は、さっきみたいに私の顔を覗き込むようにして、満面の笑みを浮かべている。
「…よかった。です……」
そう言うのが精一杯で、可愛くない態度で答えた。
自分の中でこんなに興奮するような思いは、初めてだった。
瑠衣の圧倒的な魅力。
わたしもやってみたい。
久しぶりに私を掻き立てる彼の笑顔に、私もつられて笑ってしまう。
初めて逢ったのに、彼のことが少し分かったような気がした。
「あっ、そろそろ帰らないと…」
また嶋さんに怒られちゃう。
私は時計に目をやり、焦った。
薬飲まないと、発作が…
「…じゃあ、今日は終わりね」
彼はギターケースを持ち上げ、私の頭を軽く撫でた。
「また、来るね」
まるで心を読まれたみたい。
また逢いたい。
そう思った私の心を読まれたみたい。