「北瀬くんってさ、なんであたしなんかのために、ギター引いてくれるの?」


「なんででしょうか。

 ってか、俺のことは瑠衣でいいよ」


「じゃあ、あたしも芙由で……って、質問の答えは!?」


危うく、そのヘラヘラした瑠衣の顔に騙されてしまうところだった。


「……聞いてどうするの?」

「別に、どうもしないけど」


「なら、気にしない!

 はい、ここに座って」


そう言うなりあたしの腕を掴んで、瑠衣の隣に無理矢理座らされた。


一一ドキン…


今か今かとあたしの胸はドキドキとしながら、彼が引き始めようとするギターを待ちわびる。


「なんかリクエストとかある?」


私は瑠衣の言葉に首を振った。


「あなたに任せます」


「分かりました、姫」


冗談めかしたように、口角をキュッとあげ、眉をハの字にしながら笑った。


そうして始まる。




彼の物語が…。