「別になにもないですよ」
「・・・へ?」
なにか言い渡されると思ったのか松岡さんは間抜けな声を出す。
「別になにも。松岡さんは正式には天使ではありませんし、受け継いだ子孫が使ってはいけないという規律もない」
だから私は罰とかそんなことは考えなどいない。
「ただ…それでいいのかなと思って」
「えっ・・・」
「他のマジシャンが努力をして見につけたものをあなたは力によって手に入れた。確かに派手な美しいマジックは人を虜にする。
けど、それだけなんですよね」
「・・・・」
残念ながら私の心には一切響かなかった。
「なんて。私が言えたことじゃないんですけど。
・・・今日のショーも頑張ってくださいね」
「お、おい!」
そう言い残し、その場を去った。