『俊君は、田中さんにも教えてたんだ‥』

私はコクリと頷いた。

『でもそれってさ、公平でありたかったんじゃない?』

『どういう意味?』

華代が何を考えているのか分からず、私はその場に立ち止まった。それに気付いた華代も、その場に立ち止まり、お見合いをするように向かい合った。


『私が思うにだけど‥
田中さんの思いは誰から見ても明らかじゃん。でも、俊君はその思いを受け入れることが出来なかった。何故なら他に好きな女の子がいるから』

『好きな人って??』

『まあまあ、最後まで私の話を聞いて?』

『あっ!!ごめん‥』

焦っている私を見て、軽く微笑んでから再び話を始めた。


『好きな女の子と一緒に帰りたいけど、その女の子は、田中さんの存在が気になっていて自分に近づいてくれなくなった。どうやったら、前みたいに普通に話が出来るんだろう?一緒に帰れるんだろう?

悩んだ俊君は、ある手段を思いついた。それは、好きな女の子に自分の思いを書いた手紙を渡すこと』

『それって‥』

『無事に、手紙を渡すことに成功した。でも、その時自分に思いを寄せている田中さんの存在も気になった。これで本当によかったのだろうか‥と。
悩んだ俊君は、以前から用意していた暗号の書かれた手紙を田中さんに渡した。

もし、この暗号を解くことが出来なかったら‥その時は好きな人と堂々と二人で帰ろう。でも、もし解く事ができたのならその時は‥』

『その時は‥??』

ゴクッと唾を飲み込んで、華代の言葉を待った。

『さぁ~(笑)』

その答えは拍子抜けするような言葉だった。


『そこまで引っ張っといて、それは無いんじゃない?』

『だって私、俊君じゃないもん』

華代は体の向きを変えて少しずつ歩き出した。私も遅れをとらないように、小走りで華代の横に近寄った。