『ただいま~』

家に着くとランドセルを背負ったまま、真っ先に新聞のスポーツ欄に目をやった。今日の新聞には、野球選手の名前が紹介されているコーナーが掲載されていた。


金子、金子、金子‥

球団名が分からないので、全てのチームの左投手に印をつけた。すると該当者は一人しかいなかった。

『この人‥か‥』

ランドセルからノートを取り出し、この間メモをしたページを開いて新聞の横に並べた。


「にちようクラスでのんびりひなたでにんげんかんさつえきでやるよ」

<ヒント>
俺の好きな選手の背中を飛び越えろ。


『金子さんの背中を飛び越えるってどういう意味なんだろう?』

右手で頭の後ろをクシャクシャと掻いて、ヒントをじっと見つめた。選手の背中にあるものって名前と‥数字‥‥

『数字!!』

勢いよく新聞に両手をついた為、中央がシワになってしまった。部屋には誰もいないのに、背後を気にしながら丁寧に新聞を伸ばし元通りになるように努力した。その後ランドセルから筆箱を取り出し、右手に赤ペンを握り深呼吸をした。


『金子さんの背番号は「3」。つまり、3つの文字を飛ばして読めって言いたいんだよね?』

まず、最初の文字「に」を赤ペンで丸をし、その後は3文字を飛ばして4文字目の「く」に印をつけて、それから‥‥私は慎重に丸をつけていった。すると、ある一文が完成した。