『ふぅ~』

下駄箱に手を置き息を整えた。
田中さんの顔‥怖かったな。思い出したら全身に鳥肌が立った。

ブルブル
全てを取り払うように体を左右に振った。


ハンカチ明日返そう‥

そう思い、四つ折になっていたのを更に折り曲げ小さくした。すると「クシャッ」と紙を握ったような音が聞こえた。

『なに?』

左手でハンカチをゆっくりと開くと、そこには一枚の紙が挟まっていた。ハンカチを左手に持ち替え、右手で紙を開くとそこには何か文字が書かれていた。声には出さず、心の中で読み上げた。


「2月9日、一緒に帰ろう」

俊チャンからのメッセージだった。
抑えきれない感情を少しでも和らげようとしたが、嬉しくて嬉しくてその場でガッツポーズをした。その後、手紙を胸に当ててしばらく余韻にひたっていた。



ドンドン ドン

力強い足音が響いていた。音のする方へ目を向けると、私の前に現れたのは田中さんだった。私は持っていた手紙を素早く後ろに隠したが、見つかってしまった。


『結も俊から手紙貰ったの?』

私もって事は田中さんも貰ったんだ‥有頂天になっていた思いが、一気に急降下した。でも何処か変だ。

田中さんに逢うまでは、あんなに嬉しかったのにどうして田中さんはこんなに不機嫌なんだろう?俊チャンに手紙貰ったんでしょう?

田中さんが貰った手紙の内容が気になった私は、勇気を出して話しかけた。


『あ‥のさ、手紙には何て書いてあったの?』

もともと機嫌の悪い田中さんは更に苛立った様子で私の前に一枚の紙を差し出した。

『俊は何を伝えようとしているの?』

私は一瞬の瞬きをも惜しむように、一気に目を通した。そこに書かれていた文章とは奇妙なものだった。