『なんかさ、田中って変わったよな?』

『変わったって?』

私はすかさず聞き返した。

『あっ!うん‥なんか、最近特に感じるんだけど‥投げやりっていうか焦ってるっていうか‥そんな感じしないか?』

それを聞いた私と華代は顔を見合わせた後、下を向いた。


『何か知ってるのか?』

『‥何も知らないよ‥』

『じゃあ‥?』

私たちの態度を見て、それ以上聞いても答えは変わらないと実感したのか、華代の頭を軽く叩いて私たちの傍から離れて行った。私は、浅く座っていた椅子から体を浮かせ、深く腰掛けなおた。

華代は正面の黒板を見ながら、深く悩んでいるような口調で言った。


『和樹も気付いてるんだね‥』

『‥‥うん』

『結に向かって言った、「時間がない」ってどういう事なんだろうね。やっぱ、それに関係してるのかな?』

『‥‥かな‥』

会話が行き詰まり長い沈黙が続いた。


私は、窓の外に目を向けた。今日の天気は、透き通った青い空とはかけ離れた空だった。そんな景色を見て、更によどんだ空気が私たちを筒んだ。


しばらくすると、華代がそわそわし出した。和樹君の様子が気になるんだろう‥。私は身を乗り出して華代の行動を見つめていた。

『な、何?』

額と鼻の頭に汗をかいて少し冷静さを欠いていた。

『別に~。
今日も一緒に帰るんでしょう?また明日ね(笑)』

右手は机の上に置いて、左手をヒラヒラと横に揺らした。


『何その顔!何か言いたそう』

『別に~(笑)』

『あっそ。じゃあ、また明日ね』

最後はあっさりとした終わり方だった。